「ほ〜ら、美桜!
いつまでそうしてるの」

桃ちゃんに呆れたように言われながら教室までの道のりを辿る。

怖かった。凄く怖かった。

言うまでもなくあの新任教師さんたちだ。



佐々木先生は黒茶の髪の毛で声や態度からして陽気な先生だ。

いや、それよりももう一人の先生…
宮瀬先生だ。
黒髪につり目な方だ。
そして……私が苦手とする男の人の像がそのままだ…。


「美桜、大丈夫だって。」

肩をポンポンと叩き、ね?と笑う。
そんな桃ちゃんの励ましに、ぎこちない笑みで、うん。と受け答えた。










ざわつく体育館。
遅れた新任教師二人の紹介の為である。

「おいお前ら!静かにしろっ!」


私のクラス担任が生徒指導部の為先程からざわついて五月蝿い生徒を注意していた。

朝にお迎えに行っていた私と桃ちゃんは体育館の入り口付近で佇んでいた。


「ねぇ桃ちゃん…」

「どうしたの?美桜」

腕組みしながら返答する桃ちゃんの腕をそっと触る

「…何、まだ怖いの?」

「そ、れもあるけど…
担任が〜」

泣きそうになりながら言うと組んでいた腕をほどき頭をポンポンとしてくれる。あ〜はいはい。と理解をしながら。



私は昔から男の人の怒鳴り声も圧迫感ある言い方も苦手である。

理由は追々となるが、とにかくダメなのだ。



「え〜では、新任の先生方を紹介します。
佐々木先生、宮瀬先生。壇上の方に」


いつの間にか少しは静かになった体育館にハゲの校長のマイク越しの声がした。

先程お迎えに言った二人の先生方は言われた通りに壇上に上がる。

と、同時に…


『キャ〜〜』

女子生徒たちの甲高い叫びが耳をキーン…と震わせた。

何事かと思えば、カッコいいとか、タイプとか様々な声がした。


「うぅ…桃ちゃ〜ん」

「もう少しの辛抱だから、ね?」

手をギュッとしてくれる桃ちゃんの手は温かくて段々と落ち着いてきた。


………もう一つ言うと、私はこの女子独特の甲高い声も苦手だ。

これもまた追々話す事となるだろう。