「ありがとうございます。神崎さん、新田さん」

壁でその女子生徒は見えないが、校長はその二人に温和な笑みでお礼した。

「いえいえ!」

元気な声の奴と

「大丈夫ですよ」

女らしい柔らかい声の奴。


「さ、こちらです」


俺たちの方へと二人を歩かせる。

二人ともこっちまで来ると顔を上げた。


「こちら、宮瀬桜雅先生と、佐々木桃哉先生」

ニコニコしながら自己紹介してくれる校長。

隣を見れば桃哉は満面の笑みだった。


「わざわざお迎えありがとう!オレ、佐々木桃哉!
国語科だよ!よろしくね」

ほら、桜雅も。と肘でツンツンされ仕方なく自己紹介する

「社会科担当の宮瀬桜雅だ。」

「んも〜堅いんだからー」

次は人差し指でツンツンしてきたから、一発頭を叩いといた。


「先生たち仲いいですね」

元気な声の生徒がキョトンとしながら言った。

「あ〜、オレと桜雅は幼馴染みなんだ!」

なっ!と肩を組んで来るが邪魔だったので回された手をベシッと落とした。


「あ、君たちの名前は?」

ニコニコと満面の笑みで聞くと元気な生徒はあ、と思い出したように挨拶する。

「私は新田桃果です。
2年3組の学級委員です。よろしくお願いします」

元気な生徒…新田は隣にいるバカくらいに満面の笑みで自己紹介した。

「新田さんね、よろしくー
…で、その後ろに隠れてる子は?」

新田の後ろにいる奴を指差す桃哉。
すると新田はその後ろに隠れてる奴に耳打ちした。

長い黒髪を緩く二つに結んだそいつは耳打ちされた後、コクンとだけ頷くと前に出てきた。


「…神崎、美桜です。
2年1組の学級委員です
……よろしくお願いします」

細く柔らかい声で自己紹介した神崎とやらはまた新田の後ろに隠れた。

「スイマセン。先生方
この子男の人が苦手で…」

困ったような笑みで説明すると新田は神崎の手を握った。

それに安心したのか神崎はフゥと一息付いてチラッと俺らを見た。

「っ…」


目と目が合い、一瞬ドキッときた。

綺麗な澄んだ目をしてるな…と一目で感じた。


「そっか〜。
苦手なんだ〜、残念だなー」

何が残念なのかは聞かないとして…

しかし、何故だか俺は新田の後ろに隠れてる神崎に気を惹かれたのだ。

…俺も、女子生徒が苦手だと云うのに…。