「お父さんの研究を引き継いで、星司お兄ちゃんがそのキャンディを完成させたのはいつなんですか?」
「2週間くらい前。でもこのキャンディには難点があって、やっぱり飴だから5分10分で溶けるし、織賀ちゃんと2キロ以上離れたらテレパシーはできない」
「だからお風呂覗いたりはしてないから安心してね」と星司お兄ちゃんは言ったけど、話の内容ときれいな顔に差がありすぎて頭が回らなかった。
「何日か前に一か八かでキャンディなめてたらナンパされてる織賀ちゃんを見つけて」
「あっ…」
そうか。
わたしが念じたように『これ、俺のなんだけど』ってナンパから助けてくれたのも
バイト終わりにわたしがいつも使う近道まで再現して家まで送ってくれたのも
わたしがいきなり大学に押し掛けてもすぐに会いにきてくれたのも
さっき、いきなりわたしと純一の前に現れたのも
全部キャンディの力でわたしの気持ちをわかっていたからだったんだね。

