気づくと、再び小雨が降っていて、旧体育館までの渡り廊下の端は少し濡れていた。その道すがらに自販機はあって、けれど立川はそこにはいなかった。ラインのトークで「どこにいる?」と送ったが既読もつきやしない。

なあ、立川。

おれは校内を走り回った。S教室も図書室も音楽室も部室棟の周辺もどこにも立川はいない。けれど特別教室棟から戻ってくる途中の乗降口でなにか変な違和感を感じた。下駄箱を覗くと立川のローファーがなかったのだ。いや、今日は雨だしスニーカーで来たのかもしれない。そう思ってもあの違和感は払拭しきれず、一応傘立ても確認してみた。……ない。ないのだ。あの華奢な持ち手の、地が水色の白い水玉の傘が。

立川、今なにしてるんだよ。

立川は外だ。グラウンド、はまだぐずぐずであのスニーカーを気に入っていた彼女は通りたがらないだろう。じゃあどこだ。もしかして学校をもう出てしまったのだろうか。乗降口から続くアスファルトの道をおれは再び走る。傘を開く暇ももったいない。

行くなよ。どこにも、行かないで。

大した距離でもないのに息を切らして着いたのは駐輪場。立川はそこでうずくまって泣いていた。ようやく、見つけた。