長い長い午前中の授業が終わり、時は動き出した。終令とともににわかにざわつく教室で後ろの席の立川が立ち上がる。目の端で明信と一緒に教室を出ていくのを確認しつつ、頑張れ、と念を送った。
なんだか自分のことみたいに疲れてしまい、ぼんやりと黒板を眺めては溜め息をつく。
さて、おれはおれで独り寂しく弁当でもつつきますか。
母さんが用意してくれた弁当を広げて無言で手を合わせる。好物の唐揚げとポテトサラダとミニトマト、昨日の残り物であるがんもどきと里芋の煮物、玉子焼き、シソのふりかけがかかったごはん。
うん、美味しい。ちゃんと美味しい。誰だよ、独りで食べるご飯は美味しくないとか言ったの。
プラスチックの箸でおかずを一つ一つ摘まんで口に入れた。
連結する机も今はない。
∞
食べ終えてから少し、明日の週テストの勉強でもするかと単語帳を出したところで、明信が帰ってきた。けれど、立川の姿が見当たらない。
「明信、立川は?」
「え、ああ。なんか自販機で飲み物買ってくるって」
明信の目は泳いでいた。だめだ、普通じゃない。おれの考えていたことと全然違うじゃないか。本当なら立川は明信で仲良く、あるいは照れながら「ぐっちー、私たち付き合うことになりましたー!」なんて言ってくれるはずだと思ってた。思ってたのに。
「おれ、立川のとこ行ってくる」
単語帳を机に残して駆け出した。すれ違った明信の顔は口を真一文字に引き結んだままだ。


