翔也は私の席より離れていた。

それでも私は嬉しかった。
「おまえ、なんか楽しそうだな。」
的場くんが言ってきた。
「うん。やっと会えたから…」
そう言うと、柚香は翔也を眺めた。

「………。」
的場くんはつまらなさそうな顔をした。



あれから数ヶ月ーー

翔也は的場くんと同じ、空手部に入った。私はバスケ部に入っていた。香織ちゃんは吹奏楽部だ。

「今年の後輩ちゃん、いい子なのー!」
「私も。」
香織ちゃんと一年生のことを話していた。

「んで、矢能は慣れたの?あのきつい練習には?」
香織ちゃんが翔也に聞いた。
「うん。先輩もいい人だし、剛が一緒だから…。」 
「ま、俺は頼られる存在だからなっ!」
「的場が言うと、説得力ないね。」
「うるせー。」

香織ちゃんと的場くんの会話が面白くて、思わずくすっと笑った。

放課後ー

「ねえ、四人で帰らない?」
香織ちゃんが提案してきた。
「うん。いいよ。」
「しかたねーなー!」
「俺も大丈夫。」
というわけで、玄関の前で集合ということになった。

「柚香。」
翔也が私を呼んだ。
「?」
翔也の声が聞こえるほうに振り向いた。
「俺、もうどこにも行かないから。ずっと…」

「おーい、いきなり告白かー?」
的場くんがわって入ってきた。
「あほ的場!!!!!」
香織ちゃんがぺしっと叩いた。
「せっかくいいとこだったのに!」
み、見てたんだ…。

「ふん!さっさと部活行くぞ!」
翔也を連れて的場くんは去ってしまった。

「ごめんね。ゆず。」
「ううん。いいよ、的場くんらしいよ。」

でも、あの言葉の続き聞きたかったな。
私の鼓動は少し速くなっていた。