【短】人妻と、飛び魚と、真夏の果実




…マリエと俺は、メールで繋がっているんだから。






オデオン座が最後の日。

同じクラスの小沢夏美に呼び出された。



「気付いてなかった?…ナツ、藤枝が好き、大好き…」


人影のない放課後の教室で、小沢は震える声で言った。

真っ直ぐな目をして、顔全体と首筋と耳たぶまでを真っ赤にして。


「ああ…」


俺はたじろいだ。

小沢の必死感、気迫に押されて、言葉が出なかった。


こんな時、なんて答えればいいの?
ありがとうとか、分かりましたとか?


小沢の、切れ長の潤んだ目。

俺はクリッとした目の方が好きだ。マリエみたいな。



「今日…部活も塾もないって、言ってたよね。夜、公園で逢わない?」


俺の腕にさりげなく触れてくる。おお、ボディタッチ。
男はこういうのに、弱い。


小沢を今まで、女として意識したことがなかったけど。長くて真っ直ぐな脚は、結構好きだな。

ハスキーな声も好きだし、あと……
もしかして、アッチ方面の経験ありそうなトコも。


そんなことを考えてるうちに、小沢の頬が更に赤みを帯びてくる。


「…やっぱり…藤枝は有希のことが好きなんだ…」