車から降りると、風を冷たく感じる。


さすが12月。


まだ雪は降ってないけど寒い。


碧依さんの部屋はあんまり物がなかったんだけど、私がくるようになってから少しずつ増えてきた。


お揃いのマグカップに憧れてるって言ったら呆れられたけどちゃんと買ってくれたんだ。


碧依さんはなんだかんだいっても優しい。


料理上手で、いつでもお嫁にいけるって言ってた。


誰のところにお嫁に行くの?ってきいたらいじけちゃったけどね。


「優月(ユヅキ)」


荷物を置いた碧依さんは優しく名前を呼んで、ぎゅって後ろから抱きしめてくれる。


碧依さんの心臓の音が聴こえる。


大好きな人の腕の中ほど、安心できる場所はないと思う。


でも最近、碧依さんは“好き”を言ってくれなくなった。


なんで?ってきくのもこわくて、結局そのままなんだけど…。


しばらくして碧依さんがお昼ご飯を作り始めた。


私はソファーに座りながら窓の外を眺める。


いれてもらったココアは、一口飲んだだけで冷めてしまった。


マグカップを持ったまま、キッチンにいる碧依さんを見る。