思った以上に支度に時間がかかったみたいで、リビングの時計を見ると9時10分前だった。


やばい~!


碧依さん来ちゃうよ!


あわてて玄関まで走って外に出る。


玄関のドアを開けると黒い乗用車が家の前に止まってた。


運転席側に立っているのは間違いなく碧依さん。


「ごめんなさい!待たせちゃって…」


謝る私を見て碧依さんはクスクスと笑う。


「まだ時間じゃないんだから謝んなくていいよ」


「でも…」


言いかけた私に碧依さんは近づいてポンと頭に手を置く。


この手が大好き。


今日も甘い匂いがする。


「碧依さんの手って美味しそうだよね」


碧依さんはさっきよりも笑った。


ひどい…。


頬をふくらませる私に


「食べてみる?」


って悪戯にきいてくる。


私がどんな反応するかわかってるくせに…。


「碧依さんの意地悪」


そう言っても碧依さんは笑うだけ。


なんか悔しい…。


「じゃあ車に乗って」


助手席のドアを開けて碧依さんが言う。


やっぱり大好きなんだよね。


碧依さんも運転席に乗って、碧依さんが一人暮らしをするマンションへと向かった。