ビルを二人揃って出て、タクシーを捕まえる。恋は帽子と眼鏡を、アキラはサングラスをかけて変装中だが、隠していたとしても二人は人の目を惹き付けた。
「どこいくー?」
「……パスタ食べたい」
「おっけー。んじゃ、あそこでいいかなぁ」
恋がタクシーの運転手に場所を告げると、運転手は二つ返事で頷いて車を発進ささた。
二人で食事に行くときはいつもこのスタイルで、アキラが食べたいものを言って恋が場所を決める。
恋が決める場所は撮影で行った所も多く、外れたことがない。
「今日、入学式だったんでしょー?」
「うん」
「あはっ、これからぼっちじゃん。初日から休むとか」
恋は本当に楽しそうに大口を開けてゲラゲラと笑う。それを鬱陶しそうにアキラは視線を窓の外に向けた。
しかし、恋はお腹を抱えて笑ったままだ。
「何処の高校行ったんだっけー?」
「青葉」
「まじで!? あんな頭いいとこいけんの」
アキラは恋の言葉に、大袈裟だろうという顔をするが、世間一般の目線からだと青葉の評価は非常に高いもので、学生の中で青葉の制服を着ることはステータスにもなっている。
「へー、すげぇな。ほんと。あっ、今度制服着てきてよー。俺、あそこの女子の制服好き」
「私、制服って似合わないんだけど……」
「嘘つけって、なんでも着こなす癖に」
「……お客様、つきましたが」
「ん? あ、おっけー」
恋は財布から代金を支払って、タクシーから降りる。アキラもその後に続いた。
「ここからちょっと歩くんだけど――げっ」
「……恋」
タクシーを降りて目の前にあったコンビニから翔が出てきた。
「歌撮りもう終わったのー?」
「……いや、俺も途中で抜けてきた」
「リーダーなのに、ダメじゃん」
「毎回不真面目なお前に言われたくないな」
その言葉に恋は、へーへーと面倒くさそうに返事をしている。
「お前……」
「翔くんが途中で抜けるくらいよ大切な用事があったんじゃないの?」
このままだと本当の喧嘩に発展しそうだったので、アキラが慌てて言葉を挟む。
「ーーっ、恋の説教はまた今度だ。じゃあ、アキラちゃんまた今度」
「うん」
翔はそんな言葉を置いて、自分のバイクに股がって去っていった。
「あの真面目な翔くんが歌撮りサボるなんて、どんな用事ってなんなんだろう……」
「さぁ? 翔なんてほっといて飯いこーぜ」
アキラはその言葉に首を傾げたまま、イタリアンのお店に向かうのだった。
