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ずっと好きだった。中学の頃からなんかじゃなくて、気づいたら好きだった。
好きだなんだって感情を知る前から好きだった。
産まれた時から一緒で、これからも彼氏とか彼女とかじゃなくて、幼馴染みとして一緒にいれたら良いなって思ってた。
別に、隣にいるのが当たり前とかじゃなくって……たまに会って、久しぶりだって笑かけてくれるだけでよかった。
けど、そんなの本当は耐えられない。

――私、青葉受験するんだぁ。

何度もその言葉が脳の中で反響した。青葉っていったら、私立の金持ち校で、偏差値も高くって。
俺の、選択肢にもない高校だった。
会えなくなると、そう思った瞬間今までの気持ちが目の前から消え去って、また新しい感情が産まれた気がした。淡い感情が、激しいものになって――けど、あいつの前ではやっぱり素直になれない自分のままだった。
そんな気持ちの中で、うだうだと過ごした数ヶ月。冬に差し掛かる少し前だったと思う。先生からこんな話を聞かされた。
スポーツ推薦が何校からかきていると。
正直、あまり受験を真剣に考えてなかった俺は、公立なら何処でも良いということを担任に告げた。青葉にいきたいのは山々だけど、自分にそんな学力がないことはわかっていた。

――公立だったら、こんなもんか。一応私立も、言っとくか? ……青葉と――

その時、またあの感覚に襲われた。ほんとっすか!? と、声を荒げた俺に担任は驚いたように目を丸くして頷いた。

 ――俺、青葉いきます!!

バレーが強いとこはもっと他にあった。だから担任も顧問の先生も驚いていたと思う。
でもそれから、笑って青葉は良い学校だと色んな話をしてくれたけど、俺は聞いてはいなかった。
また、あいつと一緒に居れると思うとニヤつく顔が押さえられなかった。
胸を引っ掻き回していた感情も心の中に溶けていった。


そして、大人っぽくなったあいつが、幼い頃の笑顔のままで俺を呼ぶんだ。

――てっちゃん。

それだけで、今は十分な気がした。