社宅アフェクション

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「やっぱり来てくれた。本当に優しいね、真綾は」
「直人……」


非常階段。そこに直人は座っていた。
告白の返事をするわけでもないのに、私はここに来た。


「どうしたの?なんか固いね。俺がカッコ良すぎてキンチョー?」


直人はふざけた口調で話すけど、その目は笑っていない。本当は直人も不器用なんだ。
私は直人の隣に腰かけた。


「うん。緊張はしてるかも」
「どうして?」
「こうして隣に座っても、直人の本当の気持ちが分からないから」
「………真綾って、たまに俺を苦しくさせる。俺の、好きって気持ちも伝わらない?」


そういった直人の顔は、あの時と同じだった。ステージから見た、淋しげな笑顔。


「直人はいっつも隠してる。私、今まで気づかなかった。表面の直人しか見てなくて……」
「………」
「でも、その……す、好きって言われてから、直人のことをちゃんと見るようになった…っていうか分かりたいって思ったんだ……」


私は直人の顔を見ずに話した。隣で直人が、ふっと笑った。

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