社宅アフェクション

「おい、本荘っ…はぁ…はぁ……やっぱここ…か……」
「酒田か」
「酒田か…じゃねぇよ!!!!荷物投げ出して走っていっちまうんだから!!つか何いれてんだ、このカバン!重すぎだろ!」


部室に忘れていた俺のカバンを律儀に持ってきた酒田は、少々怒っている。


「あ、あぁ…悪ぃ……」
「それよりも勝彦!部活どうしたの!?」
「いや、花巻、それよりもって……無視!?」
「今日から部活は早く終わるから、だからここにきた」


俺の言葉に、すぐに大陸が反応した。


「だめだよ!!早く終わったなら、早く家に帰って休まなきゃ!!お化け屋敷は僕たちに任せて野球に集中して──」
「心配してくれてありがとな。でも、お前らに任せっぱなしのほうが、気が晴れなくて落ち着かねぇんだ」


大陸の頭をなでた。そして座り込んだ俺を、みんなが黙って見ている。
その静寂をさくように、目黒が近づいてきた。


「本荘部長、こういうコンセプトにしたのですが、意見をいただけますか?」
「おぅ、見せてみろ」


俺の気持ちを汲んだのか、お化け屋敷の話をふってくれた目黒に、大陸たちも納得したようだった。


「あ~あ、連れて帰るの失敗しちまった!!」
「だからダメなんだよ、酒田は」
「勝彦くん以外の男に期待するなんて無駄よ、京子」
「あははっ、すごい言われよう!しゅた!」
「遠回しに直人も言われてるけど?」


いつものこいつらの雰囲気だ。心地よいとさえ思うなんて…やっぱり変わったのか?俺……


「かつ兄!!」
「大陸……」
「ありがとう!来てくれて!」


久々に見た大陸の笑顔。ただただ嬉しかった。