と、その時。



「あれ、るみ! もうクラブの終わったの?」

「あんなのすぐだよー。 なんか来年の部長決め。くじ引いてきたんだ」




走って来たのか、少し肩で息をした日向の声。




「そうなんだ。 ナオごめんね?1人にしちゃって」




……は?

1人って、俺は子供じゃないんだから。
日向に心配してもらうようなことはないし。



頬杖をついたまま、少しだけ視線を上げる。



「あれ? 壱也は?」



ほっぺたを赤く染めた日向は、教室をくるりと見渡した。



太陽の日差しに照らされて、蜂蜜色に光る髪。

胸のあたりまで伸びた内巻の髪が、ふわりと揺れるたび。
シャンプーの甘い香りが鼻をかすめる。



「……」

「……ナオ?」




……やべ。
自分でも気づかないうちに、めちゃくちゃ見てた……。




質問に答えない俺を不思議そうに見つめる日向。
ごまかすように椅子に身を投げながら視線をそらす。



「……女に呼び出されてた。 しらねーけど」


「また? 壱也、最近モテモテだね」


「……日向、あんたねぇ。 自分の事わかってる?」


「え? あたし?」




急に自分の事を言われて驚いたのか、大きな瞳をさらに見開いた日向。



……どんだけ鈍いの、お前。



半ば呆れながら顔を上げると、俺を見ていた日向と目が合って驚いた。