教室の窓から見えるのは、低く流れる雲。
空は薄く霞みがかって見えて、「ああ、冬が近い」なんて考えてしまう。


俺は太陽の日差しが当たる窓際の席に座って、ぼんやりと外を眺めていた。




空からグランドに視線を落とすと、数人の女子たちが、バトミントンをやっているのが見えた。




あんな短いスカートはいて、よく動き回れるな。
マジで気がしれねぇ……。


すっかり板についた女の制服を着た自分と、窓ガラス越しに目が合って思わず眉間にシワを寄せた。



つか、気がしれないのは、俺の方か……。
これ着てて違和感ないのはおかしい。



「はあ……」



思い切りため息をついたのと同時。
背中に小さな衝撃と共に、栗色の髪がいきなり視界に飛び込んできた。



「ナーオ!」

「いてっ」



頬杖をついてたもんだから、その勢いにガクッと机で顔を打った。



「あ……ごめん。大丈夫?」



そう言って、心配そうに俺を覗き込んだのは……。



「大丈夫じゃねーっつの!
やめろって何回言ったらわかんだよ、るみ!」


「えー……だってナオの背中から妙な哀愁が……。だから思わず。ごめんね?」



そう言いつつ、口元は笑ってるし……。
全然反省してねぇ!



MSCが開催されて以来、るみは俺になついている。

そして、さらに目を細めた俺を見てケラケラ笑うその姿は、もうあの失恋をふっきったようだ。



その屈託のない笑顔を見ると、どうしても怒れない俺がいて……。

なんか調子狂う。



「てかナオってほんと男みたい!女にしとくのもったいないなー」



ってこれが最近のるみの口癖だ。



……いやいやいやいや。
笑えないっつの。