―――ドサッ


「たた、退学ってどうゆう事っすか!?」


俺は持っていた鞄を床に落としてしまった。



「退学は退学ですっ!あたりまえでしょう!」


「んな事聞いてませんっ!」


俺が今にも掴みかかりそうな勢いで声をあげると、隣にいて静かにその様子を見ていた年輩の女の人が口を開いた。


「まあまあ、承諾したのはこの私ですよ」



何かやらかさないように俺の肩をガッチリ掴んでいた成瀬先生の手の力が緩んだ。


「……」


俺はそれと同時にその手を振り払って、少し乱れた服をなおした。



「咲坂ナオさん…この件に関しては私達の方にも否があると思っています。
でも、元を辿ればあなたのお母様の記入ミスですからね。
だから、ちゃんと転入する代わりに女子の枠に入って頂きたいの」


女の人はにっこりと微笑んだ。そしてさらにこうも続けた。



「私達はあなたが男子生徒だとわからないように、協力するつもりよ。
めったに出来ない経験ですもの。楽しむべきじゃないかしら」


「り、理事長!」


眼鏡は理事長と呼んだその人に詰め寄った。



はあ!?


楽しめだぁ!?

ふざけんなぁああ!!!