「ナオぉ?」


聞きなれた声が俺を呼んだ。



………このタイミングでくるかぁ?





「……はあ」


俺はため息をついて日向から体を離すと、声のした方へ顔を出した。

そこには壱矢が立っていた。




「壱矢ぁ」


「あ!ナオ。やっぱここにいた。ミスコン不参加って聞いたからさ……で?なにしてたの」




俺の顔を見て、ホッとした表情になった壱矢はポケットに手を突っ込みながら首を傾げた。



「なにって…」


「…あぁ。なるほど。俺お邪魔でした?」




どこから説明したら…と首を捻った俺の向こう側に視線を送りながら、壱矢は1人納得したように、にやりと笑った。


「え?」と壱矢の視線を追うと、そこには顔をさっきよりさらに真っ赤にした日向が立っていた。



「…お前勘違いすんな?俺等ここに閉じ込められてたんだから」



先走る壱矢を呆れ顔で眺めながらそう言った。



「うん。…だから俺がここにいる訳よ。まだ最後の審査残ってるし、せっかくうちの学校に転校して来たんだから1年に1度のイベント覗いてみてよ」



わかってるよと言うように壱矢は親指でグランドを指した。




なんだよ……


なんでもお見通しって訳ね。


なんか気にいらねぇけど。




「しゃーねぇな。じゃ、見に行ってやるか」


「…え…え?」



俺はそう言って、日向の手を掴むと屋上から駆け出した。



「がんばれよぉ」



背中に壱矢の声を聞きながら。

右手には日向のぬくもりを感じて。