「ナオ」



校門を出たところで、不意に背後から声をかけられた。



「?」



声のした方に、視線を送る。

壁にもたれかかるようにして、こちらを嬉しそうに眺めているのは、やたらと長身の男、壱矢だ。

なんとなく、この男を見ると俺の目は据わってしまう。


キライとかじゃないんだ。



ただ・・・・・





俺は一呼吸置いて、もう一度壱矢に視線を戻した。







「壱矢、まだ帰ってなかったんだ・・・・どした?」






俺がそう聞くと、壱矢は小首を傾げてにっこり笑った。





「ナオを待ってたんじゃん。一緒に帰ろ?」

「はぁ?なんでっ」





眉間がピクリと動き、壱矢を睨む。
俺達のところまでやってくると、壱矢は俺の腕を掴んで歩き出した。





「え?っちょ・・・・ちょっとどこ行くんだよ?」





グイグイと引っ張られて、意味もわからず長身の壱矢を見上げた。





「んー?・・・いいとこ☆」





視線だけこちらに向けると子供のような悪戯っぽい顔を覗かせた壱矢。




いいとこってなんだ!!?

つーか、そんな顔見たくねぇんだよ!!




掴まれた腕を振りほどこうと必死になっている俺を無視して、壱矢は振り返った。





「あ、日向~。悪ぃんだけど、今日はナオ俺に貸して?」

「え・・・・えっ?」




俺達のやり取りを黙って見ていた日向は、なぜか壱矢のその言葉に頬を赤らめた。




「日向ー!助けてくれ~」




俺は、ほとんど引きずられるような格好で、日向を見た。



「また明日ね」



日向は嬉しそうに、俺と壱矢に手を振った。




・・・や。だからね?

意味わかんねぇーし!!












「ナオに見せたいもんがあるんだわ」

「見せたいもの?」




そう言って、真剣な表情で真っ直ぐに前を見つめる壱矢。
俺は抵抗するのを諦めて、壱矢の数歩後ろから、その背中を追った。