それから、あっという間に月日は過ぎ。



吐く息も白い真冬。
今日は女の子にとって『特別な日』らしい。








「咲坂センパイ!
あの……これ、受け取ってください」



目の前には小さな可愛い女の子。

その手の中には、ハート型の箱が。




「えーと、俺さ……」




クシャリを後ろ髪をかきあげながら、そう言いかけると。
女の子はガバッと顔を上げた。



「いいんです!」


「え?」


「知ってます!センパイには彼女がいるって。だけど……知ってほしくて……受け取ってもらうだけでいいんです!」


「……」



両手に持ったそれを、目の前に突き出され。
俺はうーんと首に手を当てて、宙を仰ぐ。


どうしたもんか……。










「ほんとに信じらんないっっ!バッカじゃないの?」



教室に帰った俺を待ってたのは。
それはそれは怖い顔をした…………。




「……つか、なんでるみが怒ってんだよ」




椅子の背に身を投げ出し、ボリボリと頭を掻く俺の目の前で仁王立ちのるみは、鼻の穴を広げてさらにこう言った。



「あたりまえでしょ! アンタには日向って彼女がいながら、なに呼び出されるたびにチョコ受け取ってのよ! ほんと、何考えてんのよ」


「……しょーがねぇじゃん」


「しょーがねぇ……じゃないっ!」



両手でバシンって机に乗っかるるみ。


ビクっ!




こわ。
なんだよ、脅かすなよ。