開け放たれてる窓から、穏やかな風が吹いて
俺と日向の髪を揺らす。



その中に、にわかに春の気配も一緒に感じた。




えんじの短いスカートが、ふわりと持ち上がり、洗剤の香りを連れて俺の真新しい制服を撫でる。






そっと瞼を閉じて、俺の指に触れた日向の手。






「……」

「……」







ああ……。
まただ。


鎖骨の下、キシキシ痛い。


体の奥から、突き上げるようなこの気持ち。


泣きたくなるような、切なさが溢れる。





「……ひな……好きだよ」






心が叫んでる。

言葉にしても、足りないくらいだ。





この歯がゆい気持ちを伝えたい。



伝わるかな……。
少しでも、伝わってるといい。






柔らかな髪をクシャリとかきあげて、俺はまた自分の方へそっと引き寄せた。







誰もいなくなった体育館で。


春風と。
日向のシャンプーの香りと。

この甘ったるい雰囲気で。





柄にもなく



“俺は幸せ者かも”って。

“この容姿も悪くないな”





って、そう思えたんだ。









そして――――………。





ここから


新しい俺たちが始まるんだ。