「静かに!静かにしなさいッ。

なんなんですかこれは!
いいですか? 咲坂ナオの退学の件は初めから決まっていた事なんです。 その契約をいまさら覆すなんて、そんな事できるわけないでしょ!
決まりなんです………」



「まあまあ」





取り乱した校長の前にそっと歩み出たのは、やっぱり理事長で。




「了承したのは、私ですよ」



と、どっかで聞いたようなセリフをまた言った。





「……でわ、こうします」





閉じていた瞳をそっと開けると、理事長は俺をまっすぐに見た。
あの、優しくて、強いまなざしで。





……ゴクン

無意識に唾をのみ込む俺がいて。





「来年度の男子生徒の枠に、咲坂くんの名前を載せましょう。

それでいいですね?

咲坂ナオくん」



「理事長!」





おおおおお!
って感じで、また騒がしくなる館内。




校長の制止なんてもう誰の耳にも入らない。


理事長は俺を見たままで。






「なにか言いたい事は?」





そう言って、笑った。