「……ッ……」

「……」




その声に、弾かれるように日向の手が離れた。


そのことで我に返ったように、目を見開いて。





「……あ……あたし……」




震える声でそう言って、どんどん火照る顔。

涙がボロッと流れて、日向は慌ててそれを手で拭った。




「槙野ー! おお、こんなとこにいたのか。ちゃんと点呼してくれないと困るじゃないか」



顔を出したのは、成瀬。



「ん? なんだ、咲坂もいたのか。 式、始まるぞ」


「……あ、うん。今……行く」



タイミング悪……。


耳まで真っ赤になった日向は、俺と視線を合わせようとはせず、俺と成瀬に背を向けてしまった。



…………日向……。









成瀬と共に体育館へ向かう。



「……」






俺、今……なに言われたんだ?



好きって……、俺を?





手には、まだリアルにさっきの日向の手のぬくもりが残っていて。


それが逃げてしまわぬように、ギュッと握りしめた。




なにがなんだか、考えがまとまらないまま。
俺たちは修了式へと向かった。