それは、いつもとなんら変わらない
お昼休みに起こった。





「そういえばー、昨日のドラマ観た?」

「ドラマぁ?なんの?」



俺たちは、いつものように一つの机を囲んでいた。


パックジュースのストローを銜えたまんま、俺は窓の外を眺めていた俺。


いつもと違うと言えば。
日向がここにいないってこと。

なんか、職員室に書類を届けに行ったっきりいまだに帰ってこない。


日向が戻ってくるのを待ちながら、るみはひとりで、支離滅裂な会話を繰り広げていた。
そしてそれを、壱也が雑誌を広げながら曖昧に聞く。



「ね!ナオは観たでしょ? ほら、月9」



いきなり話を振られ、視線だけを向ける。



「観てない」

「えー!……まさかサッカー観てたんじゃ」

「そうだけど……まさかってなんで?」

「壱也と同じもん観てないでよぉ、面白くないな」



ウンザリしたようにるみは、ふーって息を吐き出した。


面白くなくて悪かったなぁ

って、心ん中でぼやきながらチューってジュースを吸い込んだ。




「ねえ、それやめてって言ってるでしょ」



るみは、今度は心底不愉快そうに顔をしかめた。


わかっていながら、何も入ってないジュースを吸ってる俺は、性質悪いかも。



でも、毎回突っ込むるみが面白い。



るみがムーって頬を膨らませたその時
少しだけ開いた教室の扉の向こうから、なにかが聞こえた。



“それ”は、この騒がしい騒音の中で、俺の耳に届いた。



まるで、すぐそこで誰かが言ったみたいな……。