退屈な授業。

まるで子守唄のような先生の数式を、真剣にノートにとっているのは、日向。




隣の席なのに、こんなに距離があるなんて。




手を伸ばせばその髪に触れそうなのに、日向は手を伸ばしても、絶対に届く事のない、あの雲のように感じて、思わず目を細めた。



教室の中は、いつも通りで。
今までと何もかわらなくて。
ほんとに何もなかったみたいで。


前田も壱也も突っ伏して居眠りしてるし、他の女子は鏡を机に出して、なにやら自分の顔とにらめっこしてるし。

掃除の時に、俺たちを迷惑そうにながめていたメガネも、眉間にシワをよせて黒板を睨んでる。



不自然なほど、変わらない日々。




忘れてしまいそうになる。



俺の事、みんなにバレたなんて……。




忘れてたんだ。






だけど、事件は、忘れたころにやってきた。