「……男……って、嘘……だよね」


「……」




一瞬、俺にも何が起こったのかわからなかった。


今、なんて……。

男?


話……聞かれてたんだ……。




目の前にいるのは、大きく目を見開いて固まっている砂原アユ。


クリスマスパーティの時に、雪ん子の恰好をしてたヤツだ……。
アユの後ろから、他の数人の女子も姿を現した。


「アユー、どした? あ、ナオちゃんもいるー!で、理事長に何言われたの?」


その子は、そんな事を言いながら、俺と砂原の間に割り込んできた。




ナオちゃん……か。


いまだに固まっている砂原を見て、俺は『はあ』と小さくため息を漏らした。




――もうダメだ。



そう思った。






「……砂原の聞いた通り、そのまんま」


「そ、そのまんまって……だって、今まで女の子って……だましてたの?ほんとは男なのに……だましてたんだ」


「……」




――……はは。声が震えてら。


なんて、なぜか俺は、それを他人事のように見ていて。



セーターのポケットに手を突っ込むと、もたれかかっていた体を起こして、真っ直ぐに砂原を見た。



「――……うん。騙してて、ごめん」


「……」

「え、男って……なに?ナオちゃんが?え?なにそれ」



ザワザワする周り。
気付けば、俺たちの周りには小さな人だかりが出来ていて。

そこからヒソヒソと声がする。



砂原や、その友達の間に俺の視線は吸い寄せられた。