今にも泣きそうな顔の日向は、俺の声にハッとして目を丸くした。


手に持っていた箱を日向に向けて投げる。
それは綺麗なアーチを描いて、日向の元へスッポリと収まった。




「それ、やるよ! また来年なっ」


「え、ナオッ」




二って笑って、手を上げた。
それを合図にバスの扉は閉まる。



もう日向が何を言ってもバスは止まらない。


去っていくバスのテールランプがユラユラ揺れる。


それをただ見送る俺の頬に冷たい何かが触れた。





やっと我に返り、見上げると。
その正体は。






真っ白な、雪……。

ほんとに降ってきやがった……。









「……また、来年……か」



呟いたその声も、しんしんと降る雪に溶けてしまった。
冷たくなった手をギュッと握りしめて、それをダウンのポケットに入れた。




これが。

今の俺に出来る、精一杯だ。



冷たい空気を吸い込むと、俺はバス停から足を進めた。
頭冷やすにはちょーどいいな。

路地に降ってはすぐに消えていく雪を見つめながら思う。


嘘をついてる俺も、同じように消えれたら……って。




一晩中、その雪は降り続いて。
次の日には、世界を銀色に染めていた。