「……」


何も答えない俺を見て、るみの顔が青ざめていく。



「……、……ま、まさか……宮沢……あんた……」



緩々と立ち上がると、今度は壱也に詰め寄る。



腰を抜かした俺に、前田は駆け寄ると、「ごめん、やりすぎた」と言って手を差し伸べてきた。



「……今度やったらぶん殴る」

「ははは」



その手を払いのけて、俺は重い腰を上げた。

先に部屋に戻る壱也の背中を眺める。


……アイツ……。






さっきの状況を思い出して、複雑な気持ちになる。


顔が熱い。
いや、でも手はめっちゃ冷たい。




触れるか触れないか、その距離で壱也は動きを止めると。

俺に囁いた。




『トラウマになってんの?』



――――…………って。



ドクン ドクン


ムカつく。

なんでも知ってますみたいな顔しやがって。




室内は暖かくて、だけど俺の体はずっと冷たくて。
壱也のさっきの言葉がずっと頭の中を反芻してるみたいだった。