みんなに背を向けるようにして立つ俺。
前髪に何か触れる感覚がして、俺は薄目を開けた。
「……」
「……」
近い……。
さっきまでしていた声は、もうしなくて。
きっと俺らの様子をうかがってるんだろう。
閉じられてる壱也の顔をジッと見上げる。
ほーんと、キレイな顔しちゃって。
この顔で、どれだけの女を落としてきたのか。
そーいうチャラいヤツ、俺は嫌いだけど
でも、コイツは、壱也は悪いヤツじゃないから。
顔を傾け、それと一緒にハラリと落ちる前髪に、不覚にもドキリと心臓がはねた。
息がかかる距離……。
…………。
え……。
ちょ…………。
「あああああ!」
「やああああ!」
突然の叫び声。
「……なに?いいとこなのに」
「……」
ムスッとした壱也は、そう言いながら顔を離す。
その瞬間、まるで体中の気力が一気に失われたようにガクンと崩れた。
なんだ?
今の……。
放心状態の俺のもとへ、誰かが走り寄ってきた。
「前田、最低!ここまでさせるなんて、ナオがかわいそうでしょ?」
そう言って、ガシっと肩を抱かれる。
鼻をくすぐる、ゆるくウエーブのかかった髪。
「ほんとにしてないよね?ナオ……」
心配そうに顔を覗き込んできたのは、るみ。



