見ると、意味深な顔して、俺にそれを寄せる壱也。
ち、近い、近い!
思わず身を引く。
でも、それはなぜかできなくて。
理由は肩に置かれてる手が原因なんだけど。
はあ……。
壱也は俺が疑われないように、そうしてくれてるんだ。
でも……。
「……わかったよ。わかったから離れろ」
あからさまに嫌な顔をした俺を見て、満足そうに微笑むと壱也はパッと手を離した。
吐く息が白い。
雪……は降ってないけど、空はどんより曇っていて。
もしかしたら深夜、降りだすかもしれない感じだった。
ぶるっと身震いをして、少しでも温まろうと腕を組んだ。
「咲坂ッ、宮沢!開けてほしいか?」
「はあ?」
ざけんなよ……。
って言いたいけど、悪ふざけする前田の向こうに、心配そうな表情の日向が目に入った。
「……当たり前じゃん」
力なく言った俺に、前田はとんでもない事を言い出した。
「おーし! 入れて欲しかったらキスしてみせろー!」
「はあああ!!?……ふざけんなよッ前田!」
もーう我慢できねぇー!
その単語、今使うかー!
ブチってどっかの血管切れたかも。
頭にどんどん血が上る。
「いい加減に……ッ、あにすんだよ、壱也!やりすぎだろッ」
「ちょっと落ち着けって」
後ろから羽交い絞めにされるように、飛び掛かる寸前だった俺の体が押さえつけられた。



