ヒミツの王子さま!



胸の奥が軋む。

顔をゆがめたその時。




「あー、ナオっちも来たんだ」



そう言って、数人の女の子がたくさんのお菓子を抱えて現れた。



「てゆか、ナオっちぃ、なによその恰好ー!」

「は?」



服の袖をグイグイ引っ張り言うのは、時々るみたちといる女の子。

たしか名前は……。



「そうだよっ、みんなクリスマスにちなんだものをひとつは身に着ける決まりなんだよ」

「え、そうなの?」


聞いたことねーっつの。
てゆか、なにそれ……。


チラリとまわりを見渡すと、たしかにみんな白だとか赤とかそれに緑って感じの色合いが多い気がする。


日向は……。

なにあれ……フワフワしたスカートの後ろに小さな……。



「ヒナはトナカイだよ。ちなみにアユは雪ん子ー」





ドキッ


び、ビビった……。
見てたのバレたのかな……。

いきなり日向の名前が出て、心臓止まりそうなほどビビってる俺がいて。


スカートについてるの、まさかしっぽ?
笑える……。


勝手に加速する心臓の音を落ち着かせようと、俺は髪をすきながら視線を戻す。
自分をアユと言ったその子は、真っ白なワンピースを身にまとっていた。
そう言われればそうかもしれない。




小さなひとり掛けのソファに座って、ケンタッキーのチキンにかぶりついた。

いろんなところから楽しそうな笑い声。
美味しそうな料理を食べながらあっという間に時間は過ぎた。


「ナーオ」って声がして、俺の背後に人の気配。



見上げると、ペットボトルを銜えながら、俺を覗き込んだのは壱也だ。



「ナオが来ると思わなかった」

「……連れてこられたんだよ」



クイッと口の端を持ち上げて、悪戯な笑みをこぼした壱也に、俺はぶっきらぼうに答えた。