――……『サイテイ』?




今のこの状況が理解できなくて、瞬きをした俺を見上げる日向の顔がゆがむ。
そして、セーターの袖で、グイッと唇を拭うと、止まっていたはずの涙が頬に零れた。





「ナオのバカぁああああ!!!」






吐き捨てるように言葉を投げつけて、日向はきびすを返して走り去った。


色とりどりの落ち葉を蹴って走り去るその後姿を、茫然と眺めることしかできなくて。



えんじのスカートが、走るリズムに乗って揺れる様子をただ見つめていた。




「……情けな……」



引き止めることも、何もできない。


意味わかんないのは、俺。
勝手にムカついて、勝手に壱也に嫉妬してたのも俺。


わかってんのに……。






ジンジンと痛みを増す頬に触れて、俺はそのまま顔を覆った。





思い知る。


いつのまにか俺は……


どうしよもないくらい、日向が好きなんだって。



どんな言い訳してこの気持ちに嘘をついても。
それでも。



……もう隠せない。

…………苦しいんだ。