「……っ、痛いっ!今日のナオ、わけわかんない!」
力の限り、俺を振り払う日向。
体全体を使って引き止められて、俺のバランスが崩れそうになる。
あー、もう!
「……、俺だってわかんねーよ! だけど、日向の方がわかんねぇ」
掴んだ腕はそのままに、俺はガバッと振り返った。
「……あたし?」
「そうだよっ、全部日向が悪いんだよ。
言いたい事あるならはっきり言ってよ。何も言わないのにただ機嫌が悪いんじゃ、わけわかんねーっつの」
「…………」
振り返りざまに一気にそこまで言うと、やっと我に返る。
固まったまま、まるでおびえたように何度も瞬きをする日向。
やべ……言いすぎた?
繋がれた手が、急に気まずくて。
だけど、今いきなり離すのも不自然な気がしてしまう。
つか、俺なにしてんの……
こんなとこまで日向引っ張ってきて。
だけど、いてもたってもいられなくて……。
日向の事が気になるわけじゃない。
そう決めたのに……。
日向は壱也が好きなのに。
ほんと何してんだ?
……変だよ、俺。
俯いていた日向の肩が小刻みに揺れる。
蜂蜜色の柔らかな髪が、秋の風にフワリと揺れて、俺をその甘い香りで誘惑する。
泣いてる?
そう思った。
「……ごめん……日向……俺……」



