それからも日向とは目も合わず。
壱也もなにやらぼんやりしていて。
なーんか気に入らない。
お前らは、俺の命運を握ってるんだろ?
もっとちゃんとしててほしい。
「……ったく」
HRが終わった後は、掃除の時間だ。
各生徒がそれぞれ、分担して校内を掃除している。
俺は箒を持ったまま、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
「なに荒れてんのー、ナオっち」
突然名前を呼ばれ顔を上げると、クラスの女子が数人こっちに歩いてきた。
あっという間に取り囲まれた。
俺を包み込む香水の甘い香りに、慣れない俺は眩暈にも似た感覚になる。
「別にー」
フワフワしたカノジョ達から視線をそらすと、俺は小さくため息をこぼす。
「なによぉ、テンションひくっ。あ、わかったぞぉ、壱也くんと喧嘩でもしたんでしょ?」
「はあ?」
なんで壱也?
眉間にグッとシワをよせてあからさまに嫌な顔をした俺を見て、「やっぱそうなんだ」ってなぜか納得された。
違うっつの。
って、説明するのも面倒で、俺は止まっていた手を動かした。
「てゆかさー、そんなガサツだと、壱也くんに愛想つかされるよ?自分の事“俺”って言うなんて、ナオっちだからいいものの……」
……あー、そっか。俺さっき普通に言っちゃったんだ……。
でも、怪しまれてねー……
「ほんとだよ~。うちらが言う事じゃないけど、ナオっちもっと女の子らしくした方がいいんじゃない?ウィッグつける? ロングにしたらかわいーじゃん?」
なにそれ、ウィ……?
「あと、ちゃんと化粧しなよー!肌は綺麗だからいいけど、アイメイクしたらもっと可愛いと思うよ?」
余計なお世話だっつの!
「そうかなあ? 壱也はなにも言わないけど」
そう言ってにこり。
どうだ!
俺の天使の微笑みは!



