「ナーオ!」

「うわっ」


教室に戻ると、待ち構えていたかのようにるみが飛びついてきた。



「どこ行ってたんだよー、探したんだよ」


「は?なんで。 つか離せっ!歩きづらいわ」



絡みついてくる腕をなんとか引き離しながら俺は眉間にグッとシワをよせる。



「あはは! でたー、その顔っ。あれ、壱也は?」




俺のそんな態度なんかまったく気にしてないようすのるみは、俺の眉間を指差すと、廊下に視線を送る。



壱也?


戻ってないんだ……。
先に帰ったのに。



またどっかで女子につかまってんのかな。



るみに引きづられながら席に戻ると、隣に座っていた日向が顔を上げた。

薄く化粧された大きな瞳。
色素の薄いその瞳に見つめられただけで、引き込まれそうになる。




……ゴクン



思わず口の中の唾をのみ込んだ。



だけど。


…………え?




「……」

「……」



無視かよ……。




目が合ったはず。

それなのに、日向は俺から視線を落とすと、机の上に広げられていた雑誌をめくりだした。




「……」


それは、気の早いクリスマスの特集ページ。



……なんだよ。

無視すんなよな……。



『日向』