青空が広がっている。
季節は5月。
この時期は天気も不規則で、雨が降ったり止んだり。
でも今日は快晴。
雲ひとつない、晴れ晴れとした天気。
しかし、この時期はあまり紗羅にとって好きではない季節である。
「グズっ」
花粉症のせいで目から涙、鼻は詰まっていて呼吸すら難しい。
かと言って口で呼吸しようとすれば口は渇く。
どうしたものか。
そして、空を見上げる。
「眩しい...」
今までは空なんて見てる余裕もないぐらい気持ちが暗かったが、今は見上げることができるほど清々しい気持ちが続いている。
これを作ってくれているのも全て2人のおかげだと改めて感じるのだ。
もともと季節の移り変わりや季節の香りを楽しむような性格である紗羅ではあったが、なかなかそんな余裕がなかったのは事実である。
言葉にするのでもいつも考えながら口にしていただけになにかと余裕はなかった。
こうして久々に空を見上げると自分はなんとなく幸せだと感じられるのだ。

ほんの少しして彩音と美咲が現れた。
「あ、こんなところにいた。」
「いやー、気持ちいいねー。」
5月と言えど少し暑い気もするが、涼しい風が心地よく吹く。
「グズっ」
「はは、紗羅花粉症?」
と笑われ、紗羅も苦笑いで返す。

本当にこれは夢ではない。
この幸せがいつまでも続けばいい。
心からそう願う。

宮野紗羅 15歳の記憶。