当てなんであるはずもなかった。
学校での皆の言動を見れば、結局自分は医者の子供だということだけで近づかれていたと言うことが一目瞭然であった。
浩智は近くの公園に行き、ベンチに腰掛けた。
そのとき
「ヒロ...?」
そこにはあの日喧嘩して以来口を聞かなかった愛美だった。
「こんなところで、何してるの?」
「お前こそ何してんだよ。」
「ヒロが家を出ていくのが見えたから。」
そう言って愛美は浩智の横に座った。
「何かあった?」
「お前も...」
「え?」
「お前もどうせあいつらと同じだろ!俺が医者の子供だから近づいたんだろ!なら医療ミスした医者の子供には用はねぇだろ!帰れよ。」
浩智はもう誰も信用しないとそう思っていた。
そして愛美に酷い言葉をぶつけた。
「ちがう...」
「は?」
「 違うよ!ヒロ!」
愛美は目に涙を浮かべながら浩智に言った。
「私は、ヒロのお父さんが医者だって知る前から...ヒロのこと好きだもん!」
「嘘つくんじゃねぇよ!」
「嘘じゃない!」
普段は弱気な愛美がこんなにも懸命に訴えてくることに浩智は黙ってしまった。
「私!ヒロのお父さんの仕事知ったの5歳だよ?ヒロのことはその前からずっと好きだったもん!しかも、5歳の子供が医者がどれだけ凄いとかわかるわけないじゃん!」
浩智はその言葉が今の自分の中で1番欲しかった言葉だと思った。
自分をちゃんと見て、好きになってくれた人がこんなに近くにいたことに今まで気がつけなかったのだから。
「ヒロが好き、ずっと好きだった!」
「愛美...」
浩智は我を忘れて愛美を抱きしめた。
「ヒロが辛い時は私も辛い。ヒロのことは、私が守るよ!」
愛美は泣きながらそう言った。