浩智14歳の記憶

父親は外科医。
母親は保育士。
よくある普通の家庭ではあったものの、父親は優秀な外科医で浩智も尊敬していた。
そのため浩智の夢は自分も外科医になることだった。
懸命に勉強して、絶対に父親のような優秀な医者になるのだと。

浩智は小学生のころはさほど身長も高い方ではなく、顔はカッコいいというよりはかわいいに近かった。
しかし、中2の今は身長も急激にのび顔も大人びた顔つきになった。
そのうえ父親が外科医ともなれば寄ってくる女子達は数知れない。
浩智も悪い気はしなかった。
その当時までは、単純に自分に好意を抱いているものだと思っていたからだ。

そんなある日、中3になる前に父親と進路についての話をしていた。
「浩智、お前本当に医者になりたいのか?」
「なりたい!親父みたいになりたいんだ!」
「医者の道は険しいぞ。」
「そんなこと、わかってる。」
「まぁ、お前の人生だからな。」
そう言って席を立った。
必ず、医者になる。
そう決めていた。

「あ、ヒロー!」
「愛美。」
浩智の名前を呼んだのは、幼馴染の九条愛美である。
「お前、そのヒロっていうのやめろよ。」
「えー、浩智だと長いじゃん。」
「一文字しか変わんねーし。」
愛美は小さい頃から浩智の事をヒロと呼んでいた。
本人はいつも長いからという理由で言っているが、実際は違った。
「だって、浩智ってみんな呼ぶじゃん。私はヒロの幼馴染だよ。みんなと同じ呼び方なんて嫌。」
「なんだそれ。」
愛美は浩智の淡い恋心を抱いているが、浩智との関係を壊したくなくてこの関係を続けていた。