それから紗羅が決断をするまでの間は薬による治療が行われた。
あまりの薬の量に紗羅も動揺が隠せず、不安も募るばかりであった。

後々、紗羅の担当医師が浩智であることを知った。
「あの、先生って若く見えるんですが...」
「長瀬先生は25歳だけど確かな腕を持ったお医者様よ。」
なんて看護師さんに言われたが、経験は浅いのでは？などという不安が出てくる。
そもそもなんであの人なんだろう？と紗羅は思っていた。
「長瀬先生はアメリカの大学で医学を勉強してきてるからここの病院でもかなり優秀なのよ。」
なんて付けたしされたが、社会に出れば実力の世界だとよく聞かされる。
本当に大丈夫だろうかと不安に思っていると。
「お前、今失礼なこと考えただろ？」
と聞き覚えのある声がした。
「そんなこと...ないですよ...。」
なんて言い返すが、実際のところ今考えていたことが本音であった。

でも、誰であれ結局紗羅にとって不安であることは変わりなかった。
どんなに優秀な医者でも、心臓病の外科手術はリスクも高く難しいらしい。
そう考えると、相手がベテランであろうが若い医者であろうと同じなのかもなど適当な理由をつけて自分を納得させるしかなかった。

ここから辛い戦いになるのは事実である。
もう誰でもいいと紗羅は思った。