「先生は優しいのか...意地悪なのか...よくわかりません。」
「は？優しいだろうが。」
こういうところが優しくないと凄く思うのだが自然と笑が出た。
「どうするかは焦って決めなくていい。ゆっくり考えろ。」
「そんなに時間かけて大丈夫なんですか？」
「あまりかかるのは困るが、そんなに焦っても後悔するかもしれないからな。」
そう言われて紗羅はすこし気が楽になった。
現状は何も変わらないが、気持ちにすこし余裕ができたのだ。
「後悔しない方を選べ。」
そう言って部屋を出た。
さっきまで不安でいっぱいだったがすこしだけ気が楽になったことで紗羅はそのまま静かに眠りについた。

浩智は部屋を出てから少しため息をついた。
「なんであんなこと...。」
なんとも言えない感情に浩智は顔を顰めた。
「まぁ、相手はガキだからな。」
自問のように、そして言い聞かせるかのように呟いた。
浩智にとってあんなことをするのは意外だったのだ。
紗羅に触れた手を握りしめ暗い廊下の中を歩いて行った。