いつの間にか寝てしまっていて、目が覚めたら外はもう日が落ちていた。
ぼーっとした目で外を見ながら今朝言われた事を考えた。
自分は心臓病を患っていて、手術かもしくは薬で治療をしなければならないこと。
どちらもリスクがあり、選択することが難しいこと。
この先の未来がもしかしたら自分にはないかもしれない。
それを考えるのが紗羅には怖かった。
「宮野さん、起きた?」
看護婦さんがやってきた。
手にはトレイがあり、おそらく夕食だろうと思う。
「食欲はある?」
気だるさが残る体から振り絞るように起き上がり大丈夫と伝えた。
「食べないと治るものも治らないから、しっかり食べようね。」
そう言われたが紗羅は冷静に、手術しなければ治らないのではと考えていた。
病院食はあまり美味しくないと聞くが紗羅はそうでもないと思いながら口にした。
そして、また眠りについた。
しかしあれだけ寝れば流石にすぐに起きてしまい、夜中暗い部屋の天井をただ一点見つめていた。
もういっそ楽になりたいとおもった。
つい最近までは生きる希望なんてなかったではないか。
なら今ここで楽になりたい。
そう思いながらも、心のどこかで治してまた美咲や彩音と笑って話したいと思う自分がいたのだ。
紗羅の頭のなかはグチャグチャだった。
どうしたいのかもわからなかった。
何より怖かったのだ。
発作を起こした時も正直凄く怖かったのだ。
治るかどうかもわからない。
もう出ないと思った涙が再び溢れてきた。
「また泣いてんのか?」
そこには浩智が立っていた。
「っ...」
泣いてはいけないのかと心の中で文句は言うが、本人に言えるわけもなくただ黙っていた。
そして、必死に泣き止もうとした。
しかし彼は意外な行動に出た。
紗羅の頭にそっと手を置いて
「別に泣きたきゃ泣けばいい。」
と優しく言ってきたのだ。