クラスに帰ってきてそうそう美咲が駆け寄ってきて話しかけてきた。
「紗羅！どうだった？イケメンと話したんでしょ？」
話したからといって特になにもある訳ではない。
もし自分が可愛いとか美人とかならそりゃそれなりに進展というかそういう男女の付き合いとしての行動があるだろうが、紗羅はそもそも興味のないのにどうしたらよいのだろうか。
「特になにも。」
「えー！勿体無いな。」
勿体無いなもなにも向こうも全く興味のない様子なのにどうしろと言うのだろうか。
それに、あの長瀬浩智という男がカッコいいのは確かにそうなのだが、どこか冷たい目が怖いのだ。
そんな人に好意を持つことなどない。
「財布届けて、そのままアドレス交換とかすればよかったのに。」
などと今だにいろいろ美咲は言っていた。
「まあまあ、紗羅には紗羅のペースがあるからさ。」
と彩音が言ってくる。
それはフォローになっていないと内心紗羅は心の中で思っていた。
なぜ自分があの人を好きになる設定なのかそれさえよくわからなかった。
おそらくもう二度と会うこともないというのに好きになったところでどうしようもないではないか。
それに、あそこまでのイケメンで、しかも外科医という確かな地位も持っているような男性がたかだか15.6の女子高生の相手などするはずもない。
現にあれだけの女子高生が群がったにも関わらず、本人は興味どころか相手にもしていなかった。
クラスの女子は可愛い子達もちゃんといる。
そもそも女子高生などに興味もないだろうに。
そんなことを思いながら軽く2人の会話を流して残りの仕事を始めた。

恋はまだ自分には早い。
今は自分の事でいっぱいいっぱいなのだから。
そう思いながら手を動かした。