私が忘れていたのは、夕日君がくれた形のない宝物。 出会った、音楽室。 あの時もうピアノは弾かないって…。 自然と涙が溢れた。 ずっと聴きたかった。 誰よりもずっと愛しかった。 「千尋、夕日が千尋の好きな曲弾いてくれるって。おいで。」 田中君に手をひかれ、夕日君の隣へ。 思い出すあの頃。 今、またその時が―――――。 ゆっくりと手をのせ、音がなる。 とても優しくて心地いいメロディーが耳に、体に、心に響いた。