でも……。


あたしはあの時の事を思い出して、自然と涙が浮かんできていた。


無表情のまま、まるで壊れた機械のようにボロボロと涙だけがこぼれていく。


蒼太は他人の前では完璧だった。


いつも以上に人間らしく振舞い、【彼氏人形】の話題になると


「陽子は昔から噂話をそのまま信じ込んでしまうところがあるんです」


と、何食わぬ顔で言ったのだ。


あたしはその言葉を聞いた時、唖然として言葉もでなかった。


警察官はまんまと蒼太の言葉を信じ込み、あたしが深い勘違いをしていると思われてしまったのだ。


そして、実紗を攻撃したのは【彼氏人形】ではなく、実紗の本当の彼氏だということで断定されてしまった。


実紗に彼氏はいない。


いるのは彼氏人形だけだ。


あたしは必死になって何度も何度もそう訴えた。


しかし、蒼太の方を完全に信じ込まれているため、あたしの話などロクに聞いてもらえなかった。