新しいクラスにも慣れてきた、4月のある日、凪沙は担任の先生に週番の仕事を押し付けられ、6時すぎごろに学校を出た。

「もう、こんな時間じゃん!銀◯始まっちゃうよ〜!!」

すっかり誰もいなくなった校舎を出てアニヲタの凪沙は家までの道を走った。

(わぁこの時間駅前混んでるな…)

帰宅ラッシュで混む道を見て、普段は使わない人通りの少ない住宅街の方の道を使うことにした。

銀◯のオープニングが始まる時間が近づき凪沙は全速力で道を駆け抜けていた。

しかし、家までもう少しの角を曲がったとき、ドンっと鈍い音をたてて誰かとぶつかってしまった。

「ごめんなさいっ!」

凪沙は少し立ち止まって頭を下げたが、今の凪沙の頭の中は銀◯のことでいっぱいでまたすぐ走りだした。

しかし、体が動かない。さっきぶつかった人が凪沙の腕をつかんでいたのだ。

凪沙はおそるおそるその人の顔を見上げると、そこにはいかにもマンガに出てきそうな不良が3人いた。

「ぶつかってきたくせに謝るだけか?俺の服汚れたんだけど?」

不良は凪沙に詰め寄った。

(うわーなにこのありがちな展開!もう、急いでるのにー。)

「なんで、黙ってんだよ、何とか言えよ。」

腕を掴んでいる人とは別の不良が凪沙にすごい剣幕で言った。
が、しかし凪沙はイライラしながら

「はいはい、すみませんでした」

と乱暴に言ってしまった。

「てめぇ、舐めてんのか?!」

不良はついに凪沙の胸ぐらを掴んで殴りかかった。

(やばい!!殴られる!!)

凪沙はとっさに目をつぶった。
しかし、再び目を開けたときには不良は全員倒れていた。びっくりして周りを見渡すと、すらっと背の高い男の人か1人立っていた。

「大丈夫?」

男の人は振り返って凪沙に言った。

(イケメンっ!!!)

整ったきれいな顔を見て凪沙は思った。

「あの、助けてくれてありがとうございました…!」

「怪我がなくてよかったよ。」

凪沙がお礼を言うとその男の人は凪沙のことをじっと見てから優しく笑って言った。

(何この人!!優しくてイケメンで超タイプ!!!)

「あの、お名前教えてくださいっ!!」

凪沙はその人か着ていた制服からその人は凪沙の家の近くの天才がたくさん通う超難関校に通ってることがわかった。

「深谷直人(ふかやなおと)だよ。君は?」

直人は爽やかな笑顔で言った。

「か、神崎凪沙ですっ!」

「へぇー凪沙っていうんだ。この辺は危ないから気をつけて帰るんだよ。」

「はいっ!ありがとうございました。」

凪沙はそうもう一度お礼を言ってから歩き出そうとしたら、

「あ、ちょっと待って!」

と突然直人に正面から両肩を掴まれじっと顔を見られた。

「えっ?!あ、あの?」

無言でじっと顔を眺めてくる直人に凪沙は混乱して言った。

「ふーん。よくよく見たら結構かわいいじゃん。」

直人は小さくつぶやきさっきとは打って変わった黒い笑みを浮かべた。

「よし、決めた。お前、今日から俺の彼女になれ。」






「はぁぁぁぁぁぁ?!ちょっと!何それ!!」

5秒ほど間をおいて凪沙が叫ぶように言った。

「だからー今日からお前は俺の女ってこと。」

混乱する凪沙をおき相変わらず黒い何かを企むような笑みで直人は言った。

「じゃあ、そういうことで。じゃーな。」

そのまま直人はすたすたと1人でどこかへ行ってしまった。

(はぁ?!本当になんなの?不良から助けてくれた爽やか王子様だと思ってたのに!!何が俺の女になれよ!!だれがなるか!!)

凪沙は1人取り残されわけもわからず立ち尽くしていた。


このときの凪沙はこの出会いが平凡な自分を変えるきっかけになることをまだ知らなかったのであった。