その頃父親に連れて行かれたマキは、自

室に籠り泣き叫ぶしか出来ずにいた。



オサムが消えた事の現実を目の当たりに

し、冷静な判断など出来る余裕は、全く

ない精神状態であった。



数時間前までは、隣にいた恋人。

それが今は話すことも、見ることも、そ

して笑い合うことも二度と出来ない。



マキはその現実に直面し、空虚な心に支

配されている。



そして、やり場の無い怒りすら覚えてい

たのだ。



「オサム……オサム……

許さない……女の子なんて……」



その呟く声も届く事はない現実。



しかし、その時だった。



マキは今まで聞いた事のない声を聞くこ

とになる。