G.H.Emperor



途端、頭上の鴉達が突撃してきた。

けたたましい鳴き声を響かせて黒い体当たりは雨のように


それでも


「糞だな」


小さく舌打ちと共にそう聞こえた。


彼が手にした短剣を円を描きながら異様な早さで一降りすると、鴉の軍団は弾け飛んだ。


「やだ……」


漏れたのは彼の足元から。


「やだやだやだあたしはまだ食べる!!もっと食べるんだ!!まだ二ヶ月も経ってない!!前はもっと食べれたのに……」


「やかましいな、黙れ」


「なんなの!!なんでおまえみたいな奴がここにいるの!?なんで……」


足の下でもがく則子は既に則子ではなかった。

刺された短剣によるものか、身体はあの美少女だったそれとは程遠い異物と化している。


「オレに気がつかなかったのはおまえのミスだが………時期も悪かったな。おまえは食事に目が眩んでいたから」

「いやぁ!!助けて!消えたくない!雪乃ちゃん!雪乃……」


そこで土伊東桐耶は則子の背中を蹴り上げた。

仰向けになった則子であったものは、落ち窪んだ黒い瞳で懇願する。


「お願い雪乃ちゃん、助けて……」


「震えてるね、則子」

何も出来ない私を嘲笑うかのように、土伊東桐耶はあの日の言葉を言った。



「則子……」


「雪乃ちゃん、雪乃ちゃん……」


なんの躊躇もなく、土伊東桐耶は短剣を振り上げた。


「いやぁ雪乃ちゃん!!あたし……!!!」








グドッ…