偶然見かけたのがあの桟橋の下だったのは、私が意識してその場所を見てしまっていたからだろう。
夜の闇の隙間から街灯に照らされた桟橋の下。
そこに二人は、居た。
「則子!!!」
駆け寄ってみれば則子の顔面蒼白さで事態は見て取れた。
倒れ込みそうな則子を抱えて、私は彼を睨み付ける。
「土伊東くん……則子に何するつもり!?」
「…何って?まぁオレ達は付き合っているんだから、それなりに何かするかもしれないけど」
そう言って肩を竦めて見せる。
彼の表情は街灯の逆光で読み取れなかった。
「雪乃ちゃん……っ」
私の服を強く掴み、則子は息切れた肩を上下させる。
追い掛けられていたのだろうか。
いつから?
こんなに息が切れるまで?
「下平……また会ったね、ここで」
彼の声は冷たかった。



