淡雪の恋





わたしは生まれてからずっと山の中にいた。


わたしが生まれたのはつい最近、と言ってもわたしたちの寿命は短いから最近でもないのかも。


だいたい一ヶ月くらい前だったかな。


その間、わたしの世界の全てはあの山の中だけだった。


だから、里に下りたこともなければ、人を見たこともないわけで……



雪の精たちはその寿命が尽きるまで、だいたいが山の中で生活するから里に下りるのは珍しいんだよね。


だから里から無事に戻ってきたとき、そこで何を見たのかとか、どんなものがいたのか、とか……


いろいろなお土産話は他の雪の精たちに喜ばれる。


実はわたしもその中の一人で……


わたしは氷雪に話を聞いたんだ。


氷雪の話してくれた話はすごくおもしろくて……


わたしにしてみたら想像もできないことばかりだった。


だから、わたしもいつか山を下りて、実際に自分の目で見てみたいって思ったんだよね。


反対されたけど……


氷雪は行ったのに……わたしだけ駄目なんて不公平だ!


そう思ったから氷雪を無視して出て来ちゃったんだけどね。



そうそう。


わたしが氷雪のお土産話として聞いた話によると、人はわたしたちとそんなに変わらない姿らしい。


ただ、わたしたちと違って人は温かいから肌の色とか、多少は違うらしいけど……



「せめて一目見られたらよかったのに……残念」



でも、まぁまだ時間はあるし、会えないって決まったわけじゃないもんね。



よし!と気合いを入れ直してわたしは歩き出した。











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「なんだろう、ここ?」



しばらく歩いていくと、広い場所を見つけたので行ってみる。


うーん……なんだろう?


よく分からないものが置いてある。


何に使うんだろう……?