淡雪の恋




公園について、春がわたしに気づいて笑いかけてくれる。


わたしはそれに笑顔を返す……そんな些細なことがすごく優しかったな。



今日、春は公園にいない。



すっかり見慣れたブランコにわたしは座った。


いつもは春がわたしを待っていてくれた。


だから今日は……最後は、わたしが春を待つ。



「春……」



わたしの気持ちを、伝えたい。








「っ、はぁ…はぁ……」



時間が過ぎるにつれてどんどん重くなる体。



「春……っ」



まだ、春は来ない。



苦しい……体が熱で溶けていく。



「っ、まだ、だめ……っ」



まだ、春に会えてない……気持ち、伝えてない……



そう思っても気持ちとは裏腹に体はどんどん溶けていく。



「は、る……」



会えない、の……?



氷雪にも、自分の気持ち伝えるって……背中を押してもらったのに、このまま、春に会えないまま、わたしは消えていくのかな。



「はる……」



ふっといきなり暗くなりかけた意識の中で、わたしはひんやりとした優しい空気を感じた。




どうしてなんだろうね。


いつもわたしが助けを必要とするとき、一番に気づいてくれる。



「ひょうせつ……」



目を開けなくても分かる気配。


ひんやりしていて、優しくて、いつもわたしを包んでくれる。



「淡雪が心配で来ちゃったよ」



そう言って氷雪はわたしを抱きしめた。


さっきまで暑さで溶けてしまいそうだったわたしの体に、冷たいものが流れ込んでくる。



「氷雪……?」



何をしたの?



「淡雪、淡雪は春くんに気持ちを伝えないといけないよ」


「氷雪、」


「僕は淡雪といつも一緒にいるから」


「氷雪!」



氷雪は最後に優しく笑ってわたしの額にそっと唇を落とした。



「淡雪……大好きだったよ」



白い光とともに、氷雪はわたしの中に消えていった。