「朝だな」
「ほんとだ……」
氷雪に話を聞いてもらっているうちに、もう夜が明けていた。
きらきらと朝日が残っている雪に反射する。
多分…ううん……きっと、これがわたしが見れる、最後の朝。
その景色を心に焼き付けるように見つめる。
ここでわたしは生まれて、育って……いろいろなことを知って……
大好きなわたしの場所。
「わたし、行ってくるね」
よいしょ、と立ち上がって思いっきり息を吸う。
ひんやりとした透明な空気が体の中に入ってくる。
「っ、淡雪」
「氷雪。今までありがとう」
いろいろなこと、氷雪がたくさん教えてくれた。
悲しいときも、嬉しいときも、怒ってるときも、楽しいときも……
氷雪はいつもわたしと一緒にいてくれた。
「氷雪……大好きだよ」
いっぱいの感謝を込めて、わたしは今までで一番の笑顔を見せる。
「……俺も。淡雪が大好きだよ」
氷雪はぎゅっとわたしを抱きしめて言った。
氷雪の顔は見えなかったけど……その声はすごく優しかったから、多分優しい顔をしてるのかな。
「いってらっしゃい。淡雪、ちゃんと自分の気持ち言うんだぞ」
「うん。氷雪がわたしの背中押してくれたから…大丈夫だよ。
いってきます!」
わたしはゆっくりと山をおりて行った。
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わたしはいつも通っていく道をゆっくりと歩く。
初めて山をおりたときもこの道を通ったな。
いつだったか、初めて犬を見たのもこの道だった。
この道を春が送ってくれたこともあったっけ。
月がとっても綺麗だったことを覚えてる。
歩いてるだけでなにげない思い出がたくさん溢れてくる。
ここを曲がれば、いつも春がわたしを待っていてくれた公園につく。


